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【イベントレポート】浦幌はヒグマ研究の「聖地」!論文発表会で研究の成果を知る

北海道の長い冬がようやく終わりを告げ、あたたかな日差しが降り注ぐ春が幕を開けようとしています。気温の上昇とともに雪がどんどん溶け、生き物も活動的になっていきます。

その中で「ヒグマ」の冬ごもりも終わりを告げ、活発な活動が再開されます。ヒグマによる被害が深刻な社会問題になっている北海道。住民の方はもちろん、観光客のみなさんにとっても、ヒグマ問題は気になりますよね。

浦幌町が、「ヒグマ研究の聖地」だということをご存知でしょうか。
なんと25年もの長きに渡り、調査研究が行われているんです。

その研究成果を聞くことができる発表会が、2月11日(日)に浦幌町立博物館で開催されました。その名も「卒業論文大発表会 浦幌のヒグマこんなに調べました!2024」!

この発表会は浦幌町立博物館が主催し、浦幌ヒグマ調査会、酪農学園大学野生動物生態学研究室、浦幌町中央公民館と共同で実施しています。2016年から2月の第2土曜日か日曜日に開催されていて、2024年の今回で7回目となった恒例イベントです。

当日は、88人が参加し、関係者や発表者も合わせておよそ100人が会場に集まりました。浦幌町内や十勝管内のみならず道内外から訪れた人も多く、この発表会やヒグマに対する関心の高さが感じられました。町内からは、農業関係者が多く参加していました。

身近な課題として捉えるヒグマ問題〜正しい知識が備えの第一歩〜

発表会には、江別市の酪農学園大学の学生のみなさん7人が登壇しました。学生の発表の前には、同大学野生動物生態学研究室の佐藤喜和(よしかず)教授が基調報告を行いました。

発表を行う佐藤喜和教授

ヒグマ研究のスペシャリストである佐藤教授は、街中に出没するクマ「アーバン・ベア」の問題を広く社会に広めました。実は浦幌との関わりが非常に深く、学生のころに通算5年間、浦幌で暮らしながらヒグマの研究を実施していました。卒業後も浦幌をフィールドに研究を続け、自ら起ち上げた「浦幌ヒグマ調査会」は25年の歴史があります。

佐藤教授は、北海道におけるヒグマ管理の課題について報告をしました。その中で、行政レベルでは、ヒグマ問題を地域防災と捉え制度を整えていくことが重要であり、市民レベルでは、まず関心を持ち、できることから取り組むことが大切と述べました。
最近では、気軽に参加できるヒグマに関する会議やイベントも増えてきているそうです。

ヒグマに関する活動をもっと知りたい方はこちらもご覧ください。
ヒグマの会
▶北こぶし知床ホテル&リゾート 「クマ活」

住民の問題意識を可視化した、浦幌での聞き取り調査

続いて発表したのは、酪農学園大学の学生6人と北海道大学院の学生1人です。それぞれ、ヒグマの生態や地域との関わりなどをテーマにした卒業論文や、修士論文を発表しました。

中でも筆者が印象的だったのは、伊藤彩乃さん(北海道大学・院・文学院・修士2年 )の「地域住民のヒグマ認識および人とヒグマの関わりから考えるヒグマ対策のあり方ー北海道浦幌町を事例にー」です。

発表を行う伊藤彩乃さん

伊藤さんは、地域視点のヒグマ対策を探り、浦幌町で計57日間、修士研究のため調査を実施しました。
その際、町民への聞き取り調査を行い、「行政へ求めることは?」という質問をしました。それに対し、地域のみなさんからは「特にない」という回答を得たそうです。その一方で、伊藤さんがよくよく話に耳を傾けると、課題が無いわけではなく、特に「自分たちではどうにもできない問題」に課題を感じている、ということが分かってきたといいます。この伊藤さんの気づきが、筆者にはとても印象に残っています。
対話を通して可視化される課題があるのだと、筆者自身もハッとしました。

発表を終えた伊藤さんは、「研究の今後の発展や今後必要となる調査研究についてなど、ヒグマ問題における社会科学的な研究の重要性や必要性を感じられる質問を会場の皆様からいただくことができとても嬉しかった」と安堵した表情で語り、発表の出来栄えについては、「なんとか(内容を)まとめられてよかった……!という気持ちだったが、お世話になった方々から『とても良い発表だったよ』と声をかけていただき、私の想いはしっかり届けることができたと思う」と話していました。

参加者の声

発表を聞いた参加者から感想をいただきました。

地域おこし協力隊 30代 男性
――想像を超える多くの人数が訪れていて、関心の高さに非常に驚きました。自分自身が持つヒグマについての知識は、「大きい」「襲われると危険」など簡単なものしかありませんでしたが、初心者でも分かりやすく興味深い内容でした。「背擦り行動」の姿など可愛いらしい一面もあることを知ることができ、ヒグマに対して親近感も湧きました。

農業従事者 40代 女性
――調査やデータ、それらのまとめなどの膨大な資料からなる1年間の研究の集大成が私達にも分かりやすいように簡潔にまとめられ、発表の質の高さを感じました。
私は、学生のころ、卒業論文の執筆に非常に苦労した経験があるので、学生さんの頑張りをより一層感じることができました。一生のうちの1回、大学院生だったら2回になりますが、卒業論文の調査の場に浦幌を選んでもらい、何度も足を運んで研究していただけたことがとても嬉しいです。
こういう発表会などをきっかけに、それまで考えなかったことを考えるようになったり、意識するようになったりするので、難しそうだと思っても話を聞きに行ってみることは大事ですね!
皆さん発表お疲れ様でした。

発表者の話に時折頷きながら、真剣に耳を傾ける参加者

長い年月をかけて確立したヒグマ調査〜その舞台に浦幌が選ばれるワケ〜

酪農学園大学の佐藤教授は、学生時代からヒグマ調査のフィールドとして浦幌に足を運んでいます。
ヒグマ調査は自然界の動物が相手のため、長い年月をかけて調査をし、データを集める必要があります。手間も時間も膨大となる調査を快く受け入れてくれたのが、ほかでもない浦幌町だったのです。佐藤教授いわく、浦幌町は、行政だけでなく、浦幌ヒグマ調査会をはじめとした地域の人々も非常に協力的なため、調査が非常にしやすいとのことです。

発表会で、地域住民への聞き取り調査などについて発表した伊藤彩乃さんは、研究のため、計57日間浦幌に滞在しました。
そのときのことについて、「フィールドワークで浦幌に滞在した際は、食事会や飲み会を設けてくださったり、お野菜や手料理を届けてくださったりと、浦幌の皆さんのあたたかさを感じました。たくさんお世話になったんです!浦幌の方は前向きな方が多く自分も勇気づけられました」と、嬉しそうに話していたのが印象的でした。
滞在中は「複合施設FUTABA」を拠点に調査をし、合間には、合宿などで訪れた他の大学や企業の人たちとの交流も楽しんだそうです。ちなみに、伊藤さんがたびたび利用したという浦幌の飲食店は、「ちゃんこ両国」と「コーヒー&ランチ カナリア」。一方で、町の人たちがおすそ分けしてくれた新鮮な野菜を使っての自炊も楽しんでいたと振り返っていました。

伊藤さんの研究をもっと知りたい方はこちらもご覧ください。
クマだけじゃない、クマ問題 ~クマを知るには人を知れ~

ヒグマを知るきっかけに!来年はあなたも!

2016年から毎年続く、ヒグマに関する「卒業論文大発表会」。浦幌町などをフィールドに長い年月をかけて蓄積された潤沢なデータが、佐藤教授の講演を筆頭に様々な角度から発表されました。ヒグマ問題についてあまり知識を持っていなかった筆者にとっては、どの発表も非常に分かりやすく、興味深いもので、たくさんの方の心に響く内容だったとも感じました。
この発表会は、例年、2月の第2土曜日か日曜日に浦幌町立博物館で開催されています。次回はぜひ皆さんもご参加ください!

(参考記事 2月15日 北海道新聞

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